立身流之形第二巻発刊によせて

立身流第22代宗家 加藤 紘
[平成30年4月14日掲載]

この程、立身流之形第二巻を発刊することができました。
平成9年(1997年)に父の高(たかし)と共著で上辞した立身流之形第一巻と併せると、立身流の枢要部分の風景を垣間見ることができます。
そこで、上記各巻の序文、あとがき及び目次の項目、並びに第三巻以降に予定される目次の項目を記し、立身流の全体像を漠然とですが示してみます。

第一、立身流之形第一巻(既刊)

1、序文       加藤 高

立身流の修練では、刀法の徹底鍛錬により体得した術理が、一にして二ならず、そのまま直ちに他のあらゆる武器に活用される。特に死生の間に対処する無我の境地、所謂「閑なる心の強み」は、至大至剛至玄至妙なる各種武術の精髄であって、共通一貫した心法であり、奥義としての必勝の原理である。立身流が「動く禅」と称される所以である。尚、この心法は単に勝負の時にのみに限らず、処世万般に廣く有益に活用して、世の為、人の為に大いに貢献すべき事が強調されている。
立身流の形の一大特徴をなすものに、単純樸質性がある。即ち、時代が進むにつれて次第に複雑多様化して来る様々な要素形態を濃縮圧縮し、雑多を純一にして凝集させたもので、決してただの単純化ではない。従って、単純樸質のうちに複雑絢爛にして深奥な内容が感受されるのである。
立身流全般の玄妙な術理の解説は、筆舌に及び難く極めて至難であるが、此のたびは有志の強い要望にほだされて、あえて成文化した次第である。素より不備な箇所が多々あるが、何分御諒承下さい。

2、目次

第一部 立身流概説
 総合武術としての立身流
 立身流の歴代宗家
 警視庁における立身流
 立身流傳系図
第二部 立身流之形(Ⅰ)
(一)居合
 立合表(たちあいおもて)(序)
 立合表(破)
 立合表(急)
 居組表(いぐみおもて)(序)
 居組表(破)
 居組表(急)
(二)剣術
 表(序)
 表(破)
 表(急)
 (注)本書では、剣術表之形の破および急の記載において、7本目の提刀(ていとう)向(むこう)および8本目の提刀圓(まるい)の、いずれも居合対居合である2本の形が欠落している。
 陰(小太刀)
 五合之形(ごごうのかた)
 五合之形詰合(ごごうのかたつめあい)
(三)鎗術(そうじゅつ)
 鎗合(やりあわせ)
 太刀合(たちあわせ)(鎗勝身(やりかちみ))
 太刀合(太刀勝身)
 小太刀合(こだちあわせ)
(四)棒
(五)半棒(はんぼう)
(六)長刀(なぎなた)

3、あとがき     加藤 紘

立身流の各種形につきましては、従来、一部分毎のまとめやビデオ化がなされて参りました。
我々としましては、稽古の指針となるまとまった解説書の必要性を痛感していたのですが、この程、千葉県教育委員会及び佐倉市教育委員会の補助金を受け、立身流演武大会の開催及び、形の説明を中心とする概説書の第一部を発表する機会を得ました。厚く御礼申し上げます。
本書には、流祖以来二一代の正系と無数の門流の人々の、命をかけた研究実践の成果中、ほんの一部が示されているにすぎません。
また、古流武術の形の文章表現には多くの困難が伴い、成文化自体が誤解を生ぜしめる一因をなす面があります。
動作の面に限ってみても、これを文章化する難しさばかりでなく、一つの形が千変万化の動きを内包する為、どれを基本としどれを応用とするか、どのような想定下のものをとりあげるか、などの問題が加わります。
例えば、間合という重要な曲尺(かね)に従う結果、具体的状況に応じて異なった動きが要求されます。その間合も、各人の体格や身体的特徴、その時々の武具等によって異なります。間合のあり方そのものも、修行の進むに従って異なってきます。
ある場合にはそれがよくても、他の場合にはもっとよい動きがあり、あるいは、そういう動きをしてはいけないということもあります。
しかも、立身流の形は、教育体系の一環をなしています。基本を教える場合の動き、教えを受ける側の動き、実戦を想定した動き、応用の動きなど、これらを対比すると一見しただけでは矛盾するように見える場合があります。
与えられた時日が限られていた故もあり、本書がこのような困難を克服したものとはとても言い切れません。
更に、修行の第一の目標は、すべての場合に通ずる原理原則を体得し、行動できる(曲尺合(かねあい))ようにすることにあると言えますが、これはあくまでも実地の稽古鍛錬によらなければ得られないことが銘記されねばなりません。
続巻では、他の形や基本鍛錬の方法等についても触れる予定です。
本書は、大木邦明氏をはじめとする流門の鈴木富雄、齊藤勝、山田市郎、樫村典久、藤崎吉範、菅家啓一、キーリー・リアム、江尻裕介、図司行克、金丸拓也の各氏、津田亘彦氏の調査研究協力の集大成といえるものであり、特に編集を担当した山田市郎氏の力に与ること大であったことを付記させていただきます。

平成九年八月

第二、立身流之形第二巻(新刊)

1、序文        加藤 紘

立身流之形第一巻を平成九年十二月十四日に発刊(平成二十一年十月十一日復刻)し二十年が経ちました。
第一巻での序は亡父・加藤高の文でしたが、この第二巻は立身流第二十二代宗家を継いだ私が記すことになりました。
この間、第一巻の内容や表現を更に的確にする改訂版制作を強く要望されてきました。しかし、この度、それ以上に喫緊である俰(やわら)その他の武技の要訣を成文化する機会を得たものです。第一巻に比して写真を多用しました。
形の意味内容を理解するには傳書の記載の理解が不可欠です。
幸い私は傳書の内容を見据えた「宗家論考」を書き溜め、立身流ホームページ上で公表してきました。
「宗家論考」には、父・高の文章、祖父・久の文章も掲載しました。
本書には第一部の形の解説に併せ、第二部としてこの「宗家論考」を収載いたしました。
このような構成で立身流の実相が流門以外の方々にも理解されるよう企図した次第です。

立身流の文化的側面に興味をお持ちの方々には本書の第二部からお読みいただければと存じます。

2、目次

第一部 立身流之形(Ⅱ)
(一)居合
 立合陰(初伝(しょでん))
 立合陰(本伝(ほんでん))
 立合陰(別伝(べつでん))
 居組陰(初伝)
 居組陰(本伝)
 居組陰(別伝)

(二)剣術
 二刀之形(にとうのかた)
 二刀詰(にとうづめ)

(三)俰(やわら)
 第一 俰の体系
 第二 俰の原則
 第三 受身
 第四 締(しめ)(絞を含む)
 第五 解(ほどき)
 第六 連行法
 第七 俰の形
  居組六个(か)条
   第一条  右位(うい)
   第二条  首位(しゅい)
   第三条  胸位(きょうい)
   第四条  寄壁(よりかべ)
   第五条  自故(じこ)
   第六条  額倒(かくとう)
  立合六个条
   第七条  靱付(うつぼづけ)
   第八条  引捨(ひきすて)
   第九条  片羽返(かたはがえし)
   第十条  後倒(うしろだおし)
   第十一条  髪旡(はっき)
   第十二条  髪ゆう(はつゆう,ゆうはロ編に尤)
  陰(かげ) 中(あて) 八个(はっか)
  立合外(そと)十七个条
   第十三条  小尻返(こじりがえし)之事(のこと)
   第十四条  電返(いなずまがえし)之事
   第十五条  折止(おりどめ)之事
   第十六条  袖詰(そでづめ)之事
   第十七条  大小詰(だいしょうづめ)之事
   第十八条  無妙(むみょう)之事
   第十九条  後詰(うしろづめ)之事
   第二十条  大杉倒(おおすぎだおし)之事
   第二十一条 小手折(こており)之事
   第二十二条 七里引(しちりびき)之事
   第二十三条 晒(さらし)之事
   第二十四条 左添(ひだりぞえ)之事
   第二十五条 上帯附(うわおびづけ)之事
   第二十六条 小具足(こぐそく)之事
   第二十七条 風呂詰(ふろづめ)之事
   第二十八条 挟詰(はさみづめ)之事
   第二十九条 佛倒(ほとけだおし)之事
  組合十六个条
   第三十条  四移(よつうつし)之事
   第三十一条 眩髪(くらがみ)之事
   第三十二条 八勝(はっしょう)之事
   第三十三条 射足(いあし)之事
   第三十四条 取返(とりかえし)之事
   第三十五条 横身(よこみ)之事
   第三十六条 手續(てつづき)之事
   第三十七条 形清(かたすまし)之事
   第三十八条 三形詰(みかたづめ)之事
   第三十九条 居鋪(おりしき)之事
   第四十条  身流(みながれ)之事
   第四十一条 乱合(みだれあい)之事
  (参考)短刀突様之事
   第四十二条 エラ取(どり)之事
   第四十三条 身構(みがまえ)之事
   第四十四条 鎧詰(よろいづめ)之事
   第四十五条 為状所被詰(ふしたるところつめらるる)事
  口伝 勝身(かちみ)之事
 第八 活法(かつぽう)

(四)傳技(でんぎ)(抜粋)
 妙剣(みょうけん)
 短刀 右
 短刀 左
 一圓相(いちえんそう) 右
 一圓相 左
 斬切(ざんせつ)
 合車(がっしゃ)
 一心圓光剣(いっしんえんこうけん)
 月之太刀
 日之太刀

第二部 宗家論考(第一輯(しゅう))
立身流之形第二部発刊時までに立身流ホームページに宗家論考として発表した三十編を、整理して載せたものである。

3、あとがき     加藤 紘

序文に述べたとおり、形の理解には傳書研究が不可欠です。逆に傳書の記載内容の理解には形の習得が不可欠であるのも立身流入堂訓に示されるとおりです。
すなわち、傳書の階梯と形の質及び数等の階梯は一致しなければなりません。
例えば、一心圓光剣は免之巻を傳授された者がさらに修行すべき課題として与えられ許された形であって、免之巻を授与されていない者が稽古すべき形ではありません。無資格者の稽古や演武は有害でしかありません。
他方、全くの初心者の段階で初めて指導される桁打(けたうち)、旋打(まわしうち)が向(むこう)圓(まるい)の形(かた)となり、極意之巻の月之太刀、日之太刀となります。
流門は「修業ノ道程ハ無限」(立身流入堂訓)の言葉を折ある毎に「心にあてて尋ね」(立身流道歌)てみてください。
形を離れても五百年の思索を重ねた立身流の歴史的、芸術的、科学的、文化的な価値は揺るぎません。
本書がそのような意味で多くの方々の立身流への理解を得る一助となればと願っています。
本書での演武写真には、立身流上傳 山﨑恒弥氏、流門 関根秀人氏の協力を得ました。息子の加藤敦 次期宗家には演武写真の外、多くの助言を得ました。
立身流皆伝 山田市郎師範には、第一巻に続き本書においても、内容、構成、表現、編集、企画、装丁、製本のすべてに渡り多大な尽力を得ました。山田師範なくして本書の完成は不可能でした。
また、立身流奥傳 八角敏正氏の平成十五年度国際武道大学大学院修士論文「下総佐倉藩校の武術―刀術 立身流を中心として―」に負う部分があることを付記させていただきます。
本書は「公益信託佐倉街づくり文化振興臼井基金」の多額の助成金の下、刊行することができました。厚く御礼申し上げます。

第三、立身流之形第三巻以下(未完)

予定内容

一、提刀(ていとう)
  形試合(かたしあい)
  組居合(くみいあい)
  四寸鉄刀(しゅりけん) 萬力(まんりき)四ツツメ ハヤバラシ
  外(と)のもの
  口傳(くでん)之分
二、数抜(かずぬき)
  着具之次第(ちゃくぐのしだい)
  騎士勝負
  首見参(くびけんざん)
  様(ためし)
三、用具(斬柄(きりづか) 斬台(きりだい) 振棒(ふりぼう) 袋竹刀(ふくろじない) など)
四、傳技(でんぎ)(勢眼詰(せいがんづめ) など)
五、傳書
  古文書(こもんじょ)
六、その他

以上

2018年4月14日 | カテゴリー : 宗家論考 | 投稿者 : 立身流総本部