立身流剣術表(之形)に於る足どり

立身流第22代宗家 加藤 紘
[平成27年11月1日掲載(禁転載)]

第一、立身流剣術表(之形)での足どりの態様

1、はじめに
ここで言う「足どり」とは、立身流剣術表(之形)に於て、斬撃突などの前及び後の足蹈のことで、主にその速さの面での態様の種類を意味します。
この足どりが、剣術表(之形)以外の形や他の武技の足蹈に応用されます。
武道の技は斬撃突極(きめ)中(あて)投(なげ)等の行為のみで成立するのではありません。その前後の行為と一体をなし、一連となって初めて意味を持ちます。ひいては戦場ばかりでなく、日常の行為と関連し、礼法(立身流礼法)へと連なることにもなります。

2、立身流剣術表(之形)での足どりの態様の種類
足どりは次の5種類に分類されます。

① 静歩(せいほ)
 通常よりもゆっくりした歩みです。可能な限りゆっくりした動きもここに含まれます。
② 常歩(じょうほ)
 通常の速さの歩みです。
③ 速歩(そくほ)
 通常より速く、しかし走るには至らない歩みです。
小走り
 いわゆる小走りと同じで、帯刀しての通常の走り方です。
走り
 できる限り速い走りを含む走りです。この走りは帯刀の取扱いに難があり、しかも武道での走りはスピードを競うわけでなく、速ければいいというものではないので、通常は行われません。

3、足どりの種類間の相違点は速度(及びこれに関連する体勢)だけです。
したがって、足どりの種類にかかわらず、常に足蹈の原則をみたしてなければいけません。
その内容は、拙稿「立身流に学ぶ~礼法から術技へ~」及び「立身流に於る足蹈と刀の指様」に述べたとおりです。

4、立身流剣術表之形の修行や演武の場合、足どりの種類を明確に判別して動かなければなりません。実戦や応用でこれが崩れるときもありますが、基本となる形のうえではその違いを崩してはいけません。
小さい差異でもその差異をはっきり認識でき動きをすることで初めて稽古と言えます。違いをはっきりさせない稽古は、はっきりさせるだけの力量のない者がごまかして曖昧にしているだけで、稽古とは言えません。そしてその違いが全体としての動きに冴えを生じ、かつ美を生ずることになります。

第二、立身流剣術表(之形)での足どりの方法

1、立身流剣術表(之形)序(之形)(6本。陰を含めて8本)での足どり
受方仕方ともに(以下、指定のない場合は同じ)、常に静歩を原則とする。仕方の位詰により受方が後退するときは常歩でもよい。

2、立身流剣術表(之形)破(之形)(提刀の向と圓を含む8本)での足どり
張以外は打間に入るまでは常歩。張で打間に入るまでは小走り。
打突の後、位詰する仕方は静歩、後退する受方は急歩。
中央に戻るのは小走り。
開始の位置に戻るのは常歩(又は静歩)。提刀の二本は納刀してから開始の位置へ戻り始める。

3、立身流剣術表(之形)急(之形)(提刀の向と圓を含む8本)での足どり
打間に入るまで、全て小走り。張は破の場合と同じになる。
その他は全て破と同様。

以上