立身流免之巻を允許された者の資格と義務

立身流第22代宗家 加藤 紘
令和5年(2023年)8月6日
立身流第97回特別講習会資料
佐倉市民体育館
[令和5年(2023年)8月26日掲載(禁転載)]

第一 師範

 立身流免之巻を許された者、すなわち立身流免之巻受領者は師範として遇される。
 その現在数は9名(4名の皆済者を含む)である。
 免之巻は立身流の正傳書全15巻中の13巻目に位置し、目録4巻・上傳4巻・奥傳(おうでん)4巻の次の段階である。いわゆる免許巻である。
 早くても約15年の修行を重ねた後、初めて目録の最初の巻が与えられるのだから、師範は勿論流内の重鎮である。立身流目録が現代武道の6段に相当するならば、立身流免之巻は9段に相当することになる。
 皆済までには更に2巻が控えていること等について拙稿「立身流傳書と允許」(拙著「立身流之形 第二巻」128頁以下)に記した。

第二 立身流免之巻の記載

 立身流免之巻の記載から抜粋する。

「・・・不残相傳畢縀趣他郡立師以教之亦何有恥之乎教去々々・・・」
「・・・のこらず あいつたえ おわんぬ。たとい たぐんにおもむき しにたち もってこれをおしうるも また なんぞ これをはじることあらんか。おしえつかわせ おしえつかわせ。・・・

第三 師範の資格と義務

 上記立身流免之巻の原文どおりだが、以下に解説する。

(1)師範に許された資格の内容
 師、すなわち師匠として教える資格を与えられる。
 すべて教えた。だから、例え宗家の眼の届かない地に赴き師匠として立身流を教えてもよい。それを恥ずかしがり遠慮することはない。」と鼓舞している。
 人に教えることができるということは、自分に教えることもできるということでもある。
 独り立ちし、自分で自分をも教え導く力が備わったということである。
 師については前掲拙稿、および拙稿「立身流に於る、師、弟子、行儀と剣道の「一本」」(拙著「立身流之形 第二巻」88頁以下)を参照されたい。

(2)師範の義務
 そればかりでなく、「教去々々」すなわち「教えなさい教えなさい」とされ、教えるのは免之巻受領者の義務である。
 いわゆる弘流(ぐりゅう)の責務であり、立身流を護(まも)り拡げる義務である。
 
(3)立身流免之巻の記述は次のように続き、道歌5首が示される。
「猶於此術之心持有秘事綴腰折以記之・・・」
「なお このじゅつのこころもちにおいて ひじあり。ようせつをつづり もってこれをしるす。・・・」

(4)そして、一心圓光剣を授けられる。

(5)しかし、俰極意巻と極意之巻の2巻が待っていて、他に教えるばかりでなく自らの研鑽努力が更に求められている。

(参考)
 立身流入堂訓(拙著「立身流之形 第二巻」巻頭参照)

第8条
「一 心ノ感応ト働キニツキ執心工夫シテ自探発明シ前人未踏ノ境地ニ達センコトヲ心ガヶヨ」

第10条
「一 宗家ノ許可ヲ得ズシテ立身流傳書ヲ伝授シ慢心シテ妄リニ立身流類似ノ名称ヲ付シ分派行動ヲ執るコトハ許サズ」

以上