立身流第十九代宗家 加藤久 論文
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立身流第十九代宗家 加藤久
居合の直接の目的は鞘離れの勝負に於いて敵を制するにある。此の為には如何なる突発の場合の際會しても動せず決して外界に支配されざる精神即ち平常心を養う事は根本である。
かくて敵の精神を察知する事も出来、それに對處する臨機の處置も誤るなし。居合の究局は刀を用ひずして敵を屈し自己の正道貫徹するに至るべきは左の道歌に依っても明らかなり。
- 鯉口の離れ際こそ大事なれ 抜かずに切れよ 抜いて切るまじ
進んでは大悟徹底して爭心を去り仁者に敵なきの境地も至るべきかとも思はるれど常人の望み得べき處にあらず。
殊に社會國家の一員としては尚更然りとす。
此の精神の修養は至極困難なる事なれど..